養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組がありますのでそれぞれについて解説します。
特別養子縁組とは、養子が、戸籍上も実親との関係を断ち切り、実子と同じ扱いにした縁組をさします。
養子となるには、家庭裁判所に養子縁組の審判請求をする際に原則6歳未満(0歳~5歳)であることが必要です。ただし、6歳前からすでに養親となる夫妻にすでに監護されている場合は、請求する際に8歳未満であればよいとされており、これは、養親が実親として育てることが予定されている制度であるため、子に物心がついていないことが必要だからです。このため、戸籍上は養親との関係は「長男」などの実子と同じ記載がされ、養子であることがわかりにくくなっていますが、裁判確定に基づく入籍である旨は記載され、戸籍を遡ることにより実父母が誰であったか知ることができるようになっており、養子の出自を知る権利や近親婚の防止に配慮してあります。
特別養子縁組をすると、実親と特別養子に出した子供とは、法律上は他人同然となりますので、互いに相続人になることはありません。もちろん代襲相続などの問題も起きません。そして特別養子縁組によって親子になった者同士が互いに相続人になります。なお、特別養子縁組の場合、基本的に夫婦そろって養子縁組します。
普通養子縁組とは、養子が、戸籍上は実親との関係は残り、二重の親子関係となる縁組をさします。一般にいう養子のことであり、戸籍上は養親との関係は「養子」と記載されます。
養子は養親が死亡した時に法定相続人になるだけでなく、実親が死亡した時にも法定相続人になります。
逆に、子供が先に死亡し、親が法定相続人となる場合、養親、実親ともに法定相続人になります。そしてその法定相続分の割合は実親と養親に差はありません。
実親の兄弟姉妹と、養子縁組による兄弟姉妹ともに法定相続人となります。
相続分については、片親だけが同じ兄弟姉妹の相続分は、両親ともに同じ兄弟姉妹の2分の1となります。
養子縁組による兄弟姉妹も同じで、両親ともに養子縁組したか、片親とだけ養子縁組したかにより、相続分が異なることがあります。
既に死亡した子供に子供がある場合、その子供(孫)が子供に代わって相続することを代襲相続といいます。
では養子が養親より先に死亡した場合、代襲相続はどのようになるのでしょうか。
実は、養子の子の出生又が養子縁組より先か後か異なります。
養子縁組前に出生した子供は代襲相続人にはなれず、養子縁組後に出生した子供は代襲相続人となります。
これは、代襲相続人は直系血族でなければならないため、子供のある者を養子にした場合、その養子の子供と、養親との間には法定血族関係が生じないからです。
相続税の非課税限度枠は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数」です。当然法定相続人の数が増えると非課税限度額も多くなります。生命保険、退職金の非課税枠についても同様です。法定相続人が増えると、適用される税率が低くなるという効果もありますので、相続税対策上は、法定相続人を多くした方が、当然有利になります。
過去、そうした節税目的としての養子縁組が多く見られたので、それに対抗するため、税制改正が行われ、現行の税法では、法定相続人の数に含める養子の数を、実子がある場合には1人、実子のない場合には2人に制限しています。
養子縁組による効果は従来ほどではなくなりましたが、納税額が減少することにはかわりありませんので、相続税対策としては有効です。
また、2003年の税制改正で、養子縁組をした孫は、2割加算の対象となりましたが、孫を養子にすると、子供をとばして孫に相続させることができ、本来、相続税が2回かかるところを、1回で済ませることができます。
他にも、養子縁組をすれば、生命保険金のや死亡退職金の非課税枠が増えるなどのメリットがあります。ちなみに、生命保険金は「500万円×法定相続人数」が非課税とされており、死亡退職金は「500万円×法定相続人数」が非課税とされています。
ただし、「相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」と法定相続人と認められませんので、注意が必要です。
また、養子縁組をするということは、法律上の親子関係を認めるということでもありますから、安易に届出をするべきではありません。
一度、専門家に相談に行くことをお勧めします。
養子縁組については、民法や通達等で下記のようなことがいろいろ定められています。いくつかあげてみましょう。
この場合、互いに養子縁組の合意があったとしても、届出をしていなければ法的に認められません。
婿養子や連れ子(前配偶者との間の子)、先立ってしまった夫の親が亡くなった場合の妻などは養子縁組をしていなければ相続人になりません。
この場合、遺贈や死因贈与で財産を取得することもできます。養子縁組の必要がないのであれば遺言書の作成をお勧めします。
しかし、相続人以外の人に相続財産を分け与えたい場合には、養子縁組をしない限り、遺言書がないと財産を相続することができないと考えることができます。
例えば、女性のみの子供の家庭の場合、跡取りとして旦那さんと奥さんの両親が養子縁組を希望される場合があります。
その場合、旦那さんは奥さんの配偶者であり、自分の義父と義母の子供でもあるという関係になり、配偶者の父母が亡くなった場合、配偶者と同じ立場で相続権を取得し、同じ割合で相続財産を分与することができるのです。
ここまでの話は一見問題がないように思われますが、この夫婦の間に子供がおらず、先に奥さんが亡くなり旦那さんにその相続分が渡った後、その旦那さんが亡くなった場合、旦那さんの元の家族(親、兄弟など)へ財産が渡ってしまう可能性がでてきます。
相続財産が養子縁組をしたことにより、血のつながらない旦那さんの親族に渡ってしまうことでトラブルになるケースもあるのです。
養子縁組をされる場合、先のそのまた先の相続のことも考えましょう。
配偶者に既に子があり、その子を自分の子として育てたい場合等は、養子縁組することをお勧めします。
祖父母が孫に直接相続させたいときに、孫と養子縁組するというケースもあります。この場合、子が15歳未満だと法定代理人が必要になります。
現在、日本では同性婚は認められていません。
そこで、同性同士の関係性を法的に証明する手段として、年上のパートナーの戸籍に、一方が養子として入籍する方法があります。
戸籍上は親子となってしまいますが、例えばパートナーが病気になった際の手続きの代行もできますし、何よりも相続人としての資格を得ることができます。
もちろん、パートナーを保険金の受取人に設定することも可能です。婚姻関係を結ぶことはできなくても、公的にその関係を証明するものなので、将来的な不安を解消できます。
また、養子縁組だけではなく、関係性を示す手段として公正証書による合意書の作成も併せてお勧めします。
例えば財産をパートナーに贈与する旨や、死後の葬儀をまかせる等婚姻関係に準ずるような内容を記載することも可能です。