【1】相続登記とは
亡くなられた方が、自分名義の不動産(土地・建物・マンション)を所有されている場合に、その名義を変更する手続きを、相続登記といいます。

【2】手続きの流れ
ここではまず、手続の流れをつかみ、まず何をしなければならないのかを一緒に確認していきましょう。
誰かが残念ながら亡くなられることで相続が発生し、ここからすべての始まりとなります。
遺言書があるかないかを確認しましょう。
遺言書があるのとないとでは、内容が大きく変わってきます。なぜなら、遺言書の内容は、法定相続よりも優先されるからです。
[公正証書の場合]
日本公証人会連合会で作られた遺言検索システムを利用すると便利です。平成元年以降に作成されたものであれば、最寄の公証役場に出向き、どこの公証役場で作成されたものでも調査してもらうことができます。それ以前のものになりますと、実際に作成された公証役場に出向く必要がありますので、心当たりの公証役場に出向き調べます。なお、遺言は、秘密保持の必要性が非常に高いため、遺言者が生存中、遺言者以外の方がその存在を公証役場に確認することはできません。
日本公証人連合会
http://www.koshonin.gr.jp/index2.html
[自筆証書遺言の場合]
故人が使っていた物、例えば鞄の中や引き出しの中など、心当たりのある場所をまず探してみましょう。
自筆証書遺言が見つかった場合、速やかに家庭裁判所に提出し、遺言書の検認を請求しなければなりません。遺言書の検認とは、裁判所が遺言書の存在や内容を確認し、間違いなく被相続人が作成した遺言書であることと偽造や変造を防いで保存を確実にするために行います。すぐに確認したい気持ちもわかりますが、勝手に遺言書の開封をしたり、遺言書の提出を怠ったり、検認を経ずに遺言を執行した場合、5万円以下の過料に処せられるので注意しましょう。
戸籍関係の書類取得し、相続人を確定しましょう。
戸籍謄本等を市区町村の役所から取得するだけという一見簡単な作業に見えることから、ご自分でお取りになる方もいます。しかし、誰にあたるかを家族や親戚同士で確認することができればよいのですが、養子をもらっていたり、隠し子を認知していたりすると、家族も知らない相続人が存在することがあります。
そうなると、遺産を分配した後で、新たに相続人が見つかると、再度、遺産分割の話し合いをやりなおさなければなりません。そのため、トラブルに発展することがありますので、事前にしっかりと権利者を確定する必要があります。また、法律の改正や転籍、婚姻などにより遠方の役所から戸籍謄本等を取得する必要が出てくることもあります。権利者が直系尊属や兄弟姉妹である場合には当該法定相続人につながるものも必要となりますので、収集がさらに困難になることもあります。また、古い戸籍になると専門家でさえも読むことが難しいこともありますので、戸籍を読む作業も時間と手間がかかります。
このように読んでいても嫌になるくらい、「相続人は誰なのか」を調査する作業は、一見簡単なようでとても難しく、時間と労力が必要となります。途中で戸籍の収集が困難になり、戸籍の取得を相続手続が進展しない、といった事例も多々ありますので、その際はぜひご相談ください。
法務局での物件調査や全部事項証明書を取ることなどして、相続財産を確定しましょう。
なぜなら、亡くなった人の財産すべてを受け継ぐのが原則だからです。相続財産は、不動産や預貯金、株券などのプラス財産だけではなく、借金や住宅ローン、クレジットの未払い分などのマイナス財産も受け継がなければなりません。 預貯金や不動産だけを継承したいという気持ちも分かりますが、そういうわけにはいかないのです。そうなると、借金を背負うという事態にもなりかねません。 そのようなことにならないために、遺産を受け取るか放棄するかを自由に選択することができます。放棄の詳細は、次の項目でお読み下さい。また、相続によってプラス財産が一定額を超えた場合、税金を納めなければなりません。
財産の調査及び評価が終わったら、プラス財産・マイナス財産を受け継ぐかどうかを判断しましょう。
ここまでの調査で、不動産や預貯金、株券などのプラス財産より借金や住宅ローン、クレジットの未払い分などのマイナスの財産の方が多いと判断された場合にはどうなるでしょうか?
すべてを相続しなければならないとなると、自分で作ってもいない借金、認識していない借金を継承したことで返済していかなければならなくなり、とても酷な結果になってしまいます。そこで認められた制度が放棄・限定承認です。この2つの方法は、原則として対象者が相続の発生を知ってから3ヶ月以内にしなくてはなりませんので、すぐに家庭裁判所で手続きを始めましょう。

①単純承認
単純承認とは、被相続人の財産をすべて継承する方法です。とくに手続きは必要ありませんが、借金が遺産より多い場合には、自分の財産から返済しなければなりません。単純承認の意思がなくても、次のような事実があった場合は、自動的に単純承認したものとみなされる可能性がありますので注意が必要です。
- ア.遺産の全部または一部を処分したとき。
- イ.3ヶ月の期間内に限定承認も放棄もしていなかったとき。
- ウ.限定承認や放棄したとしても、遺産の全部または一部を隠していたり、債権者に隠れて消費したり、遺産を隠すつもりで限定承認の財産目録に記載しなかったとき。
②限定承認
限定承認とは、プラス財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。
相続で得た資産の範囲内で借金を返済することとなるため、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いのか精算してみないとわからないという場合に選択されるのが一般的です。結局、借金の方が多かったというような場合でも借金を返済していく必要がありませんので相続人にとってのメリットが多いと思われますが、限定承認は非常に手間と時間がかかりますし、その中の手続きの1つである財産目録の調製はおそらく専門家に依頼することになりますので、かえって費用がかかってしまうこともありますので、放棄と同じく慎重に判断しなければなりません。また、限定承認は相続人が2人以上いる場合には、必ず全員で手続をしなければならないことにも注意しましょう。なぜなら、1人でも単純承認する人がいると、限定承認の手続きができなくなるからです。
③相続放棄
相続放棄とは、プラス財産もマイナス財産もすべて放棄し、一切の財産を相続しないという手続きです。放棄の手続きを行いますと、取り消すことはできなくなりますので慎重に判断しなければなりません。もし、財産の調査および評価に時間がかかるようであれば家庭裁判所に3ヶ月の期間の延長を請求することもできます。
放棄をした人は、最初から相続人ではなかったとされます。
遺産を相続することが決まったら、今後はその遺産をどのように分けるかを決めましょう。
何人もの相続人がいる場合、「誰が、何を、どのくらい」取得するかが問題になってきます。
遺言があれば、それに従って遺産を分割するのが原則ですが、遺言のない場合、相続人全員で遺産の分配方法を決めるため、遺産分割協議を行います。未成年者がいる場合には特別代理人の選任し、行方不明者がいる場合には、財産管理人を選任します。遺産分割協議は、相続人が1人でも欠けると無効になります。
成立した遺産分割協議どおりに遺産分割協議書を作成し、全員の署名と実印を押印します。
登記の原因によって必要書類は異なりますが、書類が揃ったら、不動産所在地の法務局に登記申請します。
当事務所では、コンピューターでオンライン申請しますので、遠方の法務局でも足を運ばず申請することができます。
【3】相続登記の種類
相続登記も、いくつか種類があります。
以下、フローチャートであなたのケースを確認してみてください。

登記を法務局に申請する場合、遺産分割協議による登記なのか、遺言による登記なのか、法定相続による登記なのかによって、必要になる書類が違ってきます。まずは一度、専門家にご相談されることをお勧めいたします。なお当事務所では、ご依頼者様のご負担を軽減するため、印鑑証明書以外の必要書類をお取り寄せ致します。