遺言の知識のすべて
遺言の作成にあたってはこれに関する法律をひととおり理解しておくことが非常に大切です。
遺言書の作成に必須の法律の知識をやさしく解説します。遺言事項、遺言能力、遺言の方式、遺言の撤回、遺贈、遺言の執行、遺留分など平易にわかりやすくご説明します。
遺言に関する法律の知識はこれで安心です。
遺言事項
遺言でなしうること
遺言は、法律で定められた事項に限り、法律的な効力を生じます。遺言でなしうる事項を遺言事項といいます。
遺言事項は、信託法上の信託の設定、財産処分すなわち遺贈及び寄附行為、子の認知、相続人の廃除又はその取消、祭祀の承継者の指定、遺言執行者の指定又は指定の委託、後見人又は後見監督人の指定、相続分の指定又は指定の委託、遺産分割方法の指定又は指定の委託、遺産分割の禁止、相続人の担保責任の指定、遺贈減殺方法の指定とされています。
これらは、生前行為によってもできものと遺言によってのみできるものとに分けることができます。
遺言によっても生前行為によってもできる行為
- ・信託法上の信託
信託とは、一定の目的に従って財産の管理又は処分をさせるために、他人に財産権の移転その他の処分をさせることをいいます。
- ・財産の処分すなわち遺贈及び寄附行為
財産の処分一般が許されるわけではなく、例えば、遺言によって借り入れをするとか遺言により抵当権の設定契約をすることなどは認められません。但し、遺言による債務免除は一種の遺贈であると考えられています。
- ・子の認知
通常の認知は、戸籍上の届出によって成立しますが、遺言による認知の場合は、遺言の効力が生じた時に認知の効力も生じます。
- ・相続人の廃除又はその取消
- ・祭祀の承継者の指定
遺言によってのみできる行為
- ・遺言執行者の指定又は指定の委託
遺言執行者は、1人でも数人でも構いません。
遺言執行者が必要であるにも関わらず、遺言による執行者の指定又は指定の委託がなされていない場合、家庭裁判所で遺言執行者を選任します。
- ・後見人又は後見監督人の指定
未成年者に対して、最後に親権を行う者で管理権を有する者は、遺言で後見人又は後見監督人を指定することができます。
したがって、父母の共同親権に服している子については、父母いずれも最後の親権者でないため、後見人等の指定はできないことになります。
- ・相続分の指定又は指定の委託
法定相続分が民法により定められていますが、被相続人の意思で法定相続分と異なる相続分を指定することができます。但し、遺留分を侵害する場合、事後的に遺留分減殺請求がなされることがあります。
- ・遺産分割方法の指定又は指定の委託
妻には自宅土地建物、長男には田畑、長女には現預金を与えるというように、個々の財産をどのように配分するかを指定することができます。
現物分割による配分方法のみならず、換価分割や代償分割、共有分割等、分割方法を自由に指定することができます。
- ・遺産分割の禁止
被相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産分割を禁止することができます。
分割禁止の遺言がある場合、相続人は、その期間中、協議による分割はもちろんのこと、調停、審判の申立もできません。
- ・相続人の担保責任の指定
相続人は、他の相続人に対し、売主と同様の担保責任を負います。
ある相続人が相続財産中の債権を取得した場合、他の相続人は、分割時もしくは弁済時における債務者の資力を担保しなければなりませんし、担保責任を負う相続人の中で資力を有しない者があるときは、他の全ての相続人がその無資力分を担保しなければなりません。
以上のような相続人間の担保責任を遺言で変更することができるとされています。
- ・遺贈減殺方法の指定
遺留分減殺の順序について、全ての遺贈は贈与より先に減殺することになっていて、遺贈が複数ある場合はその価額に比例して減殺しなければなりません。
ただし、遺言で別段の定めをすれば、遺贈の減殺については価額に比例して同時になすことを要しません。